2023年5月21日、なんみん祭で、琉球舞踊の奉納が行われました。
「なんみん」は波上宮のことで、地元では波上宮を「なんみんさん」と呼んでいます。
波上宮の神前舞台で、琉球舞踊の各流派の家元や会主の人達が立方として踊る貴重な体験。
地謡も、琉球古典安冨祖流音楽研究朝一会の生演奏で豪華でした。

午後3時半頃、路次楽の一行(首里王府阿波連路次楽御座楽保存会)が、本殿前に到着。
路次楽は、琉球国の宮廷音楽で、江戸上りの際の行列などで演奏されました。
一方、御座楽は、中国からの冊法使や江戸上りの際に将軍などに対して、室内で披露されました。

路次楽@なんみん祭

神前舞台での奉納は、御座楽の演奏から始まりました。
中国由来の楽器で、中国の曲を歌うので異国情緒がありますね。

御座楽@なんみん祭

琉球舞踊の奉納は、阿波連本流啓扇紅節の会、阿波連本流啓扇南風の会による古典老人踊「かぎやで風」から始まりました。
「かぎやで風」は、祝儀舞踊として、座開きに踊られる定番の演目。
かぎやで風節は、国王の前で演奏された為、御前風と呼ばれた節歌の一つです。
かぎやで風(カジャディフー)の語源として、尚円王を助けて国頭按司となった奥間部落の「鍛冶屋(カンジャー)」、能楽の「延命冠者」が知られています。

琉球舞踊「かぎやで風」@なんみん祭


琉球舞踊の2番目の演目は、人間国宝の宮城幸子さん(真踊流佳幸の会)による古典女踊「稲まづん」。
五穀の実りを象徴する稲穂を持って、豊作を予祝します。
前段の稲まづん節は、尚清王の時代までは御前風の一番歌だった為、昔御前風節とも呼ばれました。

琉球舞踊「稲まづん」@なんみん祭


琉球舞踊の3番目の演目は、玉城流翔節会による古典女踊「天川」です。
女七踊の一つで、男女の恋愛を描いた琉球舞踊。
後段の「仲順節」は、組踊「手水の縁」にも使われています。

琉球舞踊「天川」@なんみん祭


琉球舞踊の4番目の演目は、島袋本流紫の会による雑踊「鳩間節」。
鳩間節の踊りは、元々は鳩間島の結願祭でのユッタリした踊り「鳩間中岡」でした。
大正時代に、沖縄芝居の伊良波尹吉によって早弾きの軽快な踊りに変わり、人気の演目になりました。

琉球舞踊「鳩間節」@なんみん祭


琉球舞踊の5番目の演目は、親泊本流親扇会による「秋の踊り」。
曲は組踊「義臣物語」に使われる道輪口説ですが、歌詞は明治時代に尋常中学校の国語教師として沖縄に滞在していた言語学者・田島利三郎によります。
踊りは、明治から大正にかけて沖縄芝居で作られました。
現在の振り付けは、大正時代に親泊興照や宮城能造らによると云われています。
立方が、二代目親泊興照なのは感慨深いですね。

琉球舞踊「秋の踊り」@なんみん祭


琉球舞踊の6番目の演目は、玉城流玉扇会 玉城盛義琉舞道場による雑踊「かなよう(加那ヨー)」です。
若い娘の恋人への思いを描いた琉球舞踊。
明治時代に沖縄芝居から生まれた踊りで、玉城盛重によって振り付けられました。

琉球舞踊「かなよう」@なんみん祭


琉球舞踊の7番目の演目は、宮城流による古典女踊「女特牛節」。
組踊「大川敵討」から独立した琉球舞踊です。
大正時代に屋我良勝が中山演技場で踊ったのが、女特牛節として踊られるようになった始まりと云われています。

琉球舞踊「女特牛節」@なんみん祭


琉球舞踊の8番目の演目は、貞扇本流貞扇会による二才踊「上り口説」です。
琉球の役人が薩摩藩に出張する際の道行(首里城~山川港)が歌われています。
歌詞は首里観音堂から始まり、途中の難所・七島渡、硫黄島、桜島など多くの地名が出てきて面白いですね。

琉球舞踊「上り口説」@なんみん祭


奉納の最後は、琉球古典安冨祖流絃聲会の照喜名進さんによる独唱「述懐節」。
雑踊「花風」の後段で、下出しで使われる曲です。

独唱「述懐節」@なんみん祭

約1時間半の長丁場でしたが、久しぶりに琉球芸能を堪能できました。

琉球舞踊の奉納@なんみん祭の地図
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